つれづれ雑記

下町のはぐれ者ババアの戯言

東京オリンピック開会式と銭湯

 

 

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銭湯


2021年7月23日(金)19時55分

私は近所の銭湯にいた。

 

あと5分でオリンピックの開会式が始まるなと思いつつ、

店主ご自慢の檜風呂に浸かった。

 

学生時代、体育の時間中はいつも早く終わってくれと願ってた。

バトミントンの授業ではラリーが続かず居残りになったし、

他の生徒のプレイを体育座りで眺めている時間は死ぬほど退屈で、

運動会の前日はいつだって憂鬱だった。

オリンピックは云わば国別の大運動会であり、

こんな時に私が銭湯に来ているのは何ら不思議な事ではなかった。

 

ただ、開会式やイベントだけは楽しみだった。

 

ロンドンオリンピック開会式でMrビーン扮するローワン・アトキンソン

キーボードを使ったコントは懐かしさも相まって大笑いしたし、

見知った人物や音楽が続々と登場すると、

大英帝国エンタメの幅広さを感じられ見ていて楽しかった。

そんな経験がありリオデジャネイロオリンピック閉会式の

スタイリッシュ通り越した椎名林檎氏の音楽や新体操パフォーマンス、

マリオ前首相の土管からの登場はユーモアを感じさせ、

今日の東京五輪には本当に期待していた。

 

それは昨今のゴタゴタの報道が相次いでも薄まらなかった。

 

昼時に自衛隊ブルーインパルスの飛行時間が発表されてからは

急いで最寄りのコンビニにある麦茶とガリガリ君を買い

空を仰げる裏路地に出て真夏の太陽に根競べを挑んだし、

待つ間、ジリジリと肌を焦がす感覚があったけれども、

同じように出てきていた近所の人とワクワクを目元で表現しあったのは

照れくさいながらも楽しかった。

 

それに路上に置かれた葉先が枯れ始めた朝顔の話や、

納戸の奥から引っ張り出されたほつれた麦わら帽子など、

他愛もない話で笑っていると本当にあっという間だった。

そういえば緊急事態宣言なんて言葉がない頃は、

こんな風に夏を楽しんでいたな、とふと思ったりして。

 

 

 

いざブルーインパルス入道雲を5色の煙を残し横切った様を見たときは

暑さ故に、そう老いではなく、すべからく灼熱の暑さ故に、

「来た!」「早い!」「五輪!」等と語彙力が著しく低下していたが、

すっかり懐かしくなってしまった夏の雰囲気を久しぶりに感じられた。

 

食べかけのガリガリ君が当たり棒を手元に残し、

鉄板と化したコンクールに落ち、ジュっと溶けてゆく、

そんな当たり前の風景でさえ笑えた。

みんなも笑っていたけれども、

マスクから出ている目元のシワは記憶よりも深くなっていた気がした。

 

では、何故そんなにも楽しみにしていたのに、

銭湯に行ってしまったのか。

それは楽しみで楽しみで楽しみ過ぎるがゆえに

開会式を「あ、こんなものか……」と思ってしまったら、

五輪もスポーツも、それにエンタメも全部嫌いになりそう、

そんな予感がしてしまったからである。

 

別に理想の開会式シチュエーションがある訳ではない。

日本エンターテイメント界屈指の才能人たちが

頭を捻り上げ作り上げるのだから絶対に面白い。

トラブル続きの報道があったけれども

素人のこの感覚は杞憂に違いない。

 

ただ数年越しに熟成された期待は膨らみすぎて、

それでも、もし面白くなかったら?と不穏な問いかけをしてくるのだ。

 

私はそんな不安に耐え切れず、開会直前に家から抜け出して、

心ここにあらずなまま檜風呂に逃げたのである。

 

面倒くさい性格である。

きっとこの感覚を理解できない方のほうが多数派だろう。

 

 

 

ある歌手が好きすぎて作品を一切観れなくなったり、

好きな人と全く目を合わせられなくなったり、

好きすぎて嫌いなところを調べて感情を調整したり、

(以下省略)

 

 

本当に面倒くさい性格である。

 

おそらく明日になったらテレビがこぞって開会式の様子をダイジェストで流す。

今日のところは檜風呂にゆっくり浸かり、

番頭さんが見ている小型テレビを視界にいれないように帰ろう。

明日にはこの杞憂が晴れるほど素晴らしい映像が見れるだろう。

なんなら明日のために帰り道にコンビニで今度はビールやポップコーンを買おう。

夏限定のチューハイが発売されてるかもしれない。

話題のコンビニスイーツもカゴにいれよう。

それをつまみに観れば楽しいはず。

 

ただ、もし不穏な問いかけの通り、面白くなかったのなら

オリンピックを見るのは今年で最後になるだろうな

と、すっかり檜風呂でのぼせた私は思った。

 

 

東京オリンピック開会式と銭湯

2021年7月23日(金)19時55分

私は近所の銭湯にいた。

 

あと5分でオリンピックの開会式が始まるなと思いつつ、

店主ご自慢の檜風呂に浸かった。

 

学生時代、体育の時間中はいつも早く終わってくれと願ってた。

バトミントンの授業ではラリーが続かず居残りになったし、

他の生徒のプレイを体育座りで眺めている時間は死ぬほど退屈で、

運動会の前日はいつだって憂鬱だった。

オリンピックは云わば国別の大運動会であり、

こんな時に私が銭湯に来ているのは何ら不思議な事ではなかった。

 

ただ、開会式やイベントだけは楽しみだった。

 

ロンドンオリンピック開会式でMrビーン扮するローワン・アトキンソン

キーボードを使ったコントは懐かしさも相まって大笑いしたし、

見知った人物や音楽が続々と登場すると、

大英帝国エンタメの幅広さを感じられ見ていて楽しかった。

そんな経験がありリオデジャネイロオリンピック閉会式の

スタイリッシュ通り越した椎名林檎氏の音楽や新体操パフォーマンス、

マリオ前首相の土管からの登場はユーモアを感じさせ、

今日の東京五輪には本当に期待していた。

 

それは昨今のゴタゴタの報道が相次いでも薄まらなかった。

 

昼時に自衛隊ブルーインパルスの飛行時間が発表されてからは

急いで最寄りのコンビニにある麦茶とガリガリ君を買い

空を仰げる裏路地に出て真夏の太陽に根競べを挑んだし、

待つ間、ジリジリと肌を焦がす感覚があったけれども、

同じように出てきていた近所の人とワクワクを目元で表現しあったのは

照れくさいながらも楽しかった。

 

それに路上に置かれた葉先が枯れ始めた朝顔の話や、

納戸の奥から引っ張り出されたほつれた麦わら帽子など、

他愛もない話で笑っていると本当にあっという間だった。

そういえば緊急事態宣言なんて言葉がない頃は、

こんな風に夏を楽しんでいたな、とふと思ったりして。

 

 

 

いざブルーインパルス入道雲を5色の煙を残し横切った様を見たときは

暑さ故に、そう老いではなく、すべからく灼熱の暑さ故に、

「来た!」「早い!」「五輪!」等と語彙力が著しく低下していたが、

すっかり懐かしくなってしまった夏の雰囲気を久しぶりに感じられた。

 

食べかけのガリガリ君が当たり棒を手元に残し、

鉄板と化したコンクールに落ち、ジュっと溶けてゆく、

そんな当たり前の風景でさえ笑えた。

みんなも笑っていたけれども、

マスクから出ている目元のシワは記憶よりも深くなっていた気がした。

 

では、何故そんなにも楽しみにしていたのに、

銭湯に行ってしまったのか。

それは楽しみで楽しみで楽しみ過ぎるがゆえに

開会式を「あ、こんなものか……」と思ってしまったら、

五輪もスポーツも、それにエンタメも全部嫌いになりそう、

そんな予感がしてしまったからである。

 

別に理想の開会式シチュエーションがある訳ではない。

日本エンターテイメント界屈指の才能人たちが

頭を捻り上げ作り上げるのだから絶対に面白い。

トラブル続きの報道があったけれども

素人のこの感覚は杞憂に違いない。

 

ただ数年越しに熟成された期待は膨らみすぎて、

それでも、もし面白くなかったら?と不穏な問いかけをしてくるのだ。

 

私はそんな不安に耐え切れず、開会直前に家から抜け出して、

心ここにあらずなまま檜風呂に逃げたのである。

 

面倒くさい性格である。

きっとこの感覚を理解できない方のほうが多数派だろう。

 

 

 

ある歌手が好きすぎて作品を一切観れなくなったり、

好きな人と全く目を合わせられなくなったり、

好きすぎて嫌いなところを調べて感情を調整したり、

(以下省略)

 

 

本当に面倒くさい性格である。

 

おそらく明日になったらテレビがこぞって開会式の様子をダイジェストで流す。

今日のところは檜風呂にゆっくり浸かり、

番頭さんが見ている小型テレビを視界にいれないように帰ろう。

明日にはこの杞憂が晴れるほど素晴らしい映像が見れるだろう。

なんなら明日のために帰り道にコンビニで今度はビールやポップコーンを買おう。

夏限定のチューハイが発売されてるかもしれない。

話題のコンビニスイーツもカゴにいれよう。

それをつまみに観れば楽しいはず。

 

ただ、もし不穏な問いかけの通り、面白くなかったのなら

オリンピックを見るのは今年で最後になるだろうな

と、すっかり檜風呂でのぼせた私は思った。